インターネット接続とIX

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インターネット接続:DSLとは

DSL(Digital Subscriber Line)は、既存の電話回線で使われているメタルケーブル(銅線)を利用して、高速なデジタル通信を実現する技術です。新しく光回線を敷設せずとも利用できるため、広く普及しました。

DSLにはいくつかの方式があり、大きく分けると「上りと下りの速度が異なる非対称型」と「両方同じ速度の対称型」があります。

DSL方式特徴
ADSL(Asymmetric DSL)下り:1.5~50Mbps、上り:0.5~12Mbps。非対称型で下りが速い。距離の影響を強く受け、基地局から6km程度が限界。
HDSL(High-bit-rate DSL)2対の回線を使用。上下対称で最大2Mbps。電話(POTS)と同時利用できない。
SDSL(Symmetric DSL)1対の回線で上下対称、最大2Mbps。ただし基地局まで2km以内が条件。
IDSL(ISDN DSL)ISDN回線を利用。Dチャネルを使わない場合、最大144kbpsで通信可能。
VDSL(Very high bitrate DSL)下り最大100Mbps、上り最大40Mbps。短距離(1km以内)で高速だが、距離が延びると速度が低下。

どのDSL方式でも共通して「基地局から遠くなると速度が低下」「ノイズに弱い」という特徴があります。これは銅線特有の信号減衰の影響によるものです。

インターネット接続:ADSL

ADSLは個人ユーザーのインターネット利用で広く普及しました。Web閲覧やダウンロードなど下り通信の需要が大きいことから、上りより下りに広い帯域を割り当てています(非対称型)。

例えば G.992.1 規格では、

  • 上り:26~138kHz(最大1Mbps)
  • 下り:148~1104kHz(最大8Mbps)

というように周波数帯域を分けています。電話で使う0~4kHzは音声通話専用に確保され、これを POTS(Plain Old Telephone Service) と呼びます。

ADSLの物理構成

利用には ADSLモデムスプリッタ が必要です。

  • PC ↔ モデム:RJ45(LANケーブル)
  • モデム ↔ 電話回線:RJ11(電話ケーブル)

スプリッタにより「音声通話」と「データ通信」を分離するため、電話を使いながらインターネット利用が可能です。

キャリア側では、複数の加入者のDSL回線を束ねる DSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer) が設置され、さらに上位のルータへ接続されています。

インターネット接続:CATVインターネット

CATVインターネットは、ケーブルテレビ(CATV)網を利用したインターネット接続サービスです。テレビ放送で利用していない周波数帯をインターネット通信に割り当てています。

  • 上り:10~55MHzの範囲から任意の1.6~6.4MHz
  • 下り:600~770MHzの範囲から任意の6MHz

当初は下り30Mbps程度でしたが、現在では下り最大160Mbps、上り最大10Mbpsといったサービスも提供されています。

DSLとの違い

ADSLは「基地局からの距離」が速度に大きく影響しますが、CATVは加入者宅からの距離に関係なく一定の速度で利用できる点が特徴です。さらに、宅内はノイズに強い同軸ケーブルを使用するため、安定した通信が可能です。

CATVインターネットの物理構成

利用には ケーブルモデム混合分配器 が必要です。

  • PC ↔ モデム:RJ45(LANケーブル)
  • モデム ↔ 分配器:同軸ケーブル
  • テレビ ↔ セットトップボックス(STB):同軸ケーブル

CATVの幹線部は光ファイバーを使用し、宅内までは同軸ケーブルで接続します。この構成を HFC(Hybrid Fiber Coaxial) と呼びます。

PCから送信したデータは、CATV局にある CMTS(Cable Modem Termination System) によって変調・復調され、インターネットに接続されます。

試験では「ADSL=メタルケーブル、距離が重要」「CATV=同軸+光のHFC構成、距離の影響を受けない」という対比が問われやすいので整理して覚えておくと良いでしょう。

インターネット接続:FTTH

FTTH(Fiber To The Home)は、通信事業者の収容局から利用者宅までの区間を直接光ファイバで接続するアクセス回線方式です。銅線のADSLと異なり、ノイズや距離の影響を受けにくく、理論上は100Mbpsから1Gbpsといった高速な常時接続サービスを実現できます。日本では2001年にNTTが「Bフレッツ」として商用サービスを開始したのが普及の始まりです。

ただし、全国の全ての家庭に光ファイバを引き込むには莫大なコストがかかります。そのため、地方ではまだ完全に置き換えられていない地域もあり、まずは共用回線部分から光化を進めています。このように「局舎から街中のキャビネットまでを光化」した方式を FTTC(Fiber To The Cabinet) と呼びます。また、集合住宅やオフィスビルなどに光ファイバを引き込み、建物内で各部屋に分配する方式は FTTB(Fiber To The Building) と呼ばれます。

FTTHの接続形態

FTTHのアクセス網は大きく「専有型」と「共有型」に分かれます。

接続形態接続方式特徴
専有型(SS方式)Single Star加入者宅と局舎を1対1で直結。高品質だがコストが高い。
共有型(ADS方式 / AON)Active Double Star中継地点で多重化装置を用い、1対Nで接続。既存メタル線を活用できるが、装置に電源が必要。ほとんど使われない。
共有型(PDS方式 / PON)Passive Double Star光スプリッタで信号を分岐。装置が安価で給電も不要。現在もっとも普及している方式。

このうち主流は PON(Passive Optical Network) です。

PONの仕組み

PON方式では、次の装置・要素で構成されます。

要素役割
OLT(Optical Line Terminal)局舎に設置。電気信号と光信号を相互変換し、加入者宅のONUとやり取りする。
光スプリッタOLTとONUの間に設置され、1本の光ファイバを複数に分岐。給電不要。
ONU(Optical Network Unit)加入者宅に設置。PCやルータからの電気信号を光に変換して送信し、受信した光信号を電気信号に戻す。
光ファイバ信号を伝送する媒体。ADSLのように距離やノイズの影響をほとんど受けない。

PONで使われる3つの技術

  1. TDM(Time Division Multiplexing)
    下り方向で使用。OLTからの信号を時間で区切り、複数加入者に同時送信する。ONU側は自分のデータだけを取り出す。
  2. TDMA(Time Division Multiple Access)
    上り方向で使用。複数のONUが同時送信すると衝突するため、送信タイミングを制御し、時間を分けて送信する。
  3. WDM(Wavelength Division Multiplexing)
    波長分割多重。1本の光ファイバで上下方向の通信を同時に行えるよう、上りと下りで異なる波長を割り当てる。

PONシステムでは、1本の光ファイバを最大32分岐まで可能としています。これにより、多数の加入者宅を効率よく接続できます。

GE-PON(Gigabit Ethernet PON)

PON技術にギガビットイーサネットを取り入れたものが GE-PON です。

  • 上り・下りともに最大1Gbps(理論値)を実現
  • IEEE 802.3ahで標準化(2004年)
  • 日本ではNTTの「フレッツ光ネクスト」などで採用

試験では「PON=光スプリッタで分岐、電源不要」「GE-PON=1Gbpsを実現、IEEE 802.3ah規格」といったキーワードがよく問われるため、整理して覚えておくと有効です。

IX(Internet Exchange)とは

IX(インターネットエクスチェンジ)は、インターネット相互接続点を意味する言葉です。簡単に言えば、複数のインターネット事業者(ISP)やインターネットデータセンター(IDC)が集まり、相互にネットワークをつなぐための場所や仕組みのことです。日本語では「アイエックス」と呼ばれます。

もしIXが存在しなければ、異なるISP同士が通信するために個別に回線を引かなければならず、非常に非効率です。しかし、各事業者がIXにだけ接続すれば、そこを介して他の事業者ともつながることができます。つまり、IXは「ISP同士をつなぐハブ空港」のような役割を果たしています。

IXを利用することで、ISPは相互にトラフィックを直接やり取りできるようになり、上位のトランジット回線を経由する必要が減ります。その結果、コスト削減や障害の影響を避けやすくなるのです。

ピアリングとトランジット

IXに関連する重要な用語として ピアリング トランジット があります。

用語説明
ピアリングISP同士が直接BGPで経路情報を交換し、相互にトラフィックをやり取りすること。互いに利益があるため、基本的に無償。
トランジットあるISP(AS)が別のISPに「インターネット全体への接続性」を有償で提供すること。利用量に応じてコストが増える。

試験では「ピアリング=無償」「トランジット=有償」という対比がよく問われます。

日本の代表的なIX

日本には商用IXと学術IXがあります。

  • 商用IX
    • JPIX
    • BBIX
    • JPNAP
  • 学術研究向けIX
    • NSPIXP

IXに接続するには専用の回線や機器が必要であり、初期費用・運用費用は高額です。ただし、多くのデータセンターにはIXの設備が設置されており、その構内接続を利用者に提供している場合があります。この場合、データセンター経由で比較的容易にIXへ参加できます。

試験対策としては「IX=ISP同士の相互接続点」「ピアリングとトランジットの違い」「日本の主要IXの名称」を押さえておくことが重要です。

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